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【獣医師が解説】犬猫の採尿方法|正しい採取方法からよくある失敗例まで

愛犬や愛猫と暮らしていると、動物病院で「おしっこを持ってきてください」と言われることがありますよね。しかし、いざ採尿となると「どうやって採ればいいのだろう」「失敗したらどうしよう」と不安に感じる飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、愛犬や愛猫の健康管理に欠かせない採尿方法を、正しい手順から気をつけたいポイントまで詳しくご紹介します。
この機会にぜひ、スムーズに採尿するコツを身につけてみましょう。

■目次
1.採尿が必要になる症状や状況とは?
2.自宅でできる採尿方法
3.採尿の失敗例と対策
4.病院での採尿について ┃ 自宅で採尿が難しい場合でも安心
5.よくある質問と疑問 ┃ 採尿に関するポイント
6.まとめ

 

採尿が必要になる症状や状況とは?


尿検査は犬や猫の体調を把握し、病気の診断に役立つ重要な検査です。特に、膀胱や腎臓など尿路系の病気を見つけるためには欠かせません
健康診断の一環として定期的に尿検査を受けることで、病気の早期発見につながります。

以下の症状が見られた場合は尿検査を受ける必要があります。

尿の色がいつもと違う:赤みがかっている、濃すぎる、あるいは異常に薄い場合は注意が必要です。
血尿についてはこちらから

排尿の頻度や量が変化している:頻繁にトイレに行く、逆に排尿回数が減る、または一度の量が極端に増減する場合は尿路系の異常が疑われます。

排尿時に鳴く、またはためらう様子がある:痛みや違和感があるサインかもしれません。

異常に水を飲む:普段より多く水を飲む場合、糖尿病や腎臓の病気が関連している可能性があります。

 

自宅でできる採尿方法


自宅でストレスの少ない採尿ができると理想的ですね。ここでは、犬や猫がリラックスした状態で採尿できる方法をご紹介します。

<犬・猫共通の採尿方法>

・トレーやラップをトイレに敷く
いつものトイレに水を吸収しない素材(プラスチック製のトレーやラップなど)を敷いておきます。愛犬や愛猫が排尿した後、その尿を清潔な容器に入れましょう。

・ペットシーツの裏に溜まった尿を採取する
ペットシーツを裏返して設置すると、排尿後に尿が溜まる部分ができます。スポイトなどを使って、この尿を吸い取り、清潔な容器に移しましょう。

・ウロキャッチャーを使用する
採尿専用キット「ウロキャッチャー」は、棒状の道具にスポンジが付いており、排尿中に直接尿を採取することができます。
特に、採尿に慣れていない場合やタイミングを見計らうのが難しいときに便利なアイテムです。

 

<犬の場合の採尿方法>

お散歩の際、紙コップやおたまなどを持ち歩き、愛犬が排尿を始めたらそっとお尻の下に差し出して尿を採取します。
また、ペットシーツやトレーを敷いて採尿する方法も併用できます。これなら室内での排尿にも対応可能です。

 

<猫の場合の採尿方法>

神経質ではない猫であれば、トイレの猫砂を減らしておくことで、排尿後にトイレに溜まった尿をそのまま採取できる場合があります。

 

採尿の失敗例と対策


犬や猫の採尿は、初めて挑戦する際には失敗してしまうことも珍しくありません。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、スムーズに採尿を行えるようになります。
失敗を防ぐポイントを押さえて、スムーズに採尿できるように準備しましょう。

<失敗例 1:排尿中に逃げられてしまう>

排尿中に紙コップやおたまを差し出そうとしたところ、犬や猫が驚いて逃げ出し、排尿中に家の中を走り回ることがあります。
この結果、採尿に失敗するだけでなく、トイレ以外の場所を汚してしまうこともあります。

■対策方法
愛犬や愛猫の性格に合わせた方法を選びましょう。
神経質な性格の場合は、紙コップやおたまを使う方法は避け、ペットシーツの裏側に溜まった尿を採取するなど、犬や猫に気づかれにくい方法を試してみてください。
また、採尿の際は静かに動き、急な音や動作で驚かせないことが大切です。

 

<失敗例 2:不純物が多すぎる>

採尿に成功しても、尿にゴミや猫砂などの不純物が混じりすぎている場合、正確な検査ができなくなることがあります。

■対策方法
トイレを使用する場合は、事前に清潔にしておきましょう。また、採取した尿を透明な容器に移し替えて、不純物が多くないか確認してください。

 

<失敗例 3:保管方法が誤っている、保管時間が長すぎる>

採取後の尿を適切に保管しなかった場合や長時間放置してしまうと、尿が変質して検査結果に影響を及ぼすことがあります。例えば、高温の場所に置くと尿中の成分が変化してしまうことがあります。

■対策方法
採取した尿は、空気に触れないよう密閉できる清潔な容器に入れ、冷蔵庫で保管してください。さらに、採尿後はできるだけ早く動物病院に持参することを心がけましょう。特に数時間以上経過する場合は、冷蔵保存が必須です。

 

病院での採尿について ┃ 自宅で採尿が難しい場合でも安心


採尿がうまくいかず、動物病院を受診する日までに尿を準備できなかったとしても心配はいりません。その場合は、病院で採尿を行うことが可能です。
病院で採尿することで、新鮮で不純物のない尿を確実に採取できるというメリットもあります。

<病院での採尿方法>

・カテーテル採尿
一般的な方法として「カテーテル採尿」があります。この方法では、カテーテルと呼ばれる細い管を犬や猫の尿の出口(尿道)から挿入して尿を採取します。
施術の際には局所麻酔薬のゼリーを使用し、犬や猫ができるだけ痛みを感じないように配慮して行います。

・膀胱穿刺(ぼうこうせんし)
診断の目的や必要性に応じて、「膀胱穿刺」という方法が選ばれることもあります。この方法では、お腹の外側から膀胱に向けて細い針を刺し、尿を直接採取します。
慣れた獣医師が慎重に行えば、犬や猫が嫌がったり暴れたりすることはほとんどなく、安全にきれいな尿を採取することが可能です。

 

<病院で採尿するメリット>

・新鮮で不純物の混ざっていない尿を採取できるため、より正確な検査が可能です。
・専門的な手技により、安全かつ迅速に採尿が行えます。
・自宅での採尿に失敗した場合の心配や負担が軽減されます。

 

よくある質問と疑問 ┃ 採尿に関するポイント


採尿について、飼い主様からよく寄せられる質問や疑問にお答えします。

Q. 朝一番の尿が良いって本当? 
A. はい、朝一番の尿が理想的です。
尿は食事や運動の影響を受けやすいため、できるだけ朝一番に安静な状態で採取した尿が望ましいとされています。

 

Q. どのくらいの量が必要ですか?
A. 思ったより少量で大丈夫です。
検査には5~10cc(ペットボトルのキャップ約1杯程度)の尿があれば十分です。それ以上採れた場合も、清潔な容器に入れてお持ちください。

 

Q. 保存方法はどうすれば良いですか?
A. 密閉容器に入れて冷蔵保存してください。
採尿後は空気に触れないよう密閉できる容器に入れ、冷蔵庫で保存してください。これにより尿の成分が変化しにくくなります。

 

Q. 持ち込みまでの時間は?
A. 短ければ短いほど良いですが、24時間以内を目安にしてください。
最適なのは採尿後1時間以内ですが、冷蔵保存している場合は24時間以内に持参すれば問題ありません。

採尿に関する不安や疑問があれば、遠慮なく動物病院のスタッフにご相談ください。適切なアドバイスをもらいながら準備を進めましょう。

 

まとめ


採尿のしやすさは、飼い主様の慣れや愛犬・愛猫の性格によって変わるものです。初めての場合や、うまくできるか不安な場合は、事前に動物病院でアドバイスを受けておくと安心です。

採尿は健康管理の大切なステップです。無理をせず、愛犬や愛猫に合った方法を選びながら進めましょう。

 

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